『SONG FOR TALES OF THE ABYSS』(ソング・フォー・テイルズ・オブ・ジ・アビス)はBUMP OF CHICKEN名義ではなく2018年現在までで唯一のMOTOO FUJIWARA名義での藤原基央のソロ作品です。
ゲームソフト『テイルズオブジアビス』のBGM、主題歌を収録したサウンドトラックで、藤原さんが「作品全体で主題歌(カルマ)を表現したい」という意見を取り入れ、制作が開始されました。
今回はサントラ『SONG FOR TALES OF THE ABYSS』の楽曲解説をしていこうと思います。
SONG FOR TALES OF THE ABYSSの収録曲解説
SONG FOR TALES OF THE ABYSSの収録曲
譜歌 〜quartet〜
チェロ、ヴィオラ、バイオリン2本で演奏していて歌は無い。
アルバム中に3種類の『讃歌』があり、それぞれ違った表情を味わえます。
meaning of birth
タイトル意味は『生まれた意味』。ゲーム中では「栄光の大地 エルドラント」でのルーク対アッシュの戦闘曲として使われている。
『カルマ』のまんまでいいんじゃないかという考えが藤原さんの中にあって、『カルマ』の変奏曲、いわゆるオーケストラヴァージョンという形になった。
最初の太鼓の音はグランカッサという楽器を使用している。
promise
『カルマ』四重奏曲、タイトル意味は『約束は果たされる』。
疾走感のあるカルマをスローテンポにしたことでなんだか神聖な響きに聴こえます。藤原さんが慣れない弦楽器をやるうえで勉強になったと話しています。
time to raise the cross
タイトル意味は『十字架を立てる時』。ゲームタイトル画面の曲から戦闘シーンの曲に繋げたもの。
藤原さんが一番最初にオーケストラ的なものに取り組んだ楽曲です。
in between 1 and 0
タイトル意味は『1と0の間』、ルークがある行動を起こし、覚悟を決めるシーンで流れる。
ハープシコードとリーズ(オーボエorクラリネット)をサンプリングしてカルマのサビメロに当てている。
この曲は風を表現していて、ゲーム内でルークとティアが良い感じになるシーンだったので女性的な部分も表現した結果、とても柔らかいサウンドになったそうです。
a place in the sun
タイトル意味は『陽だまり』、フルート、ピッコロが効果的に使われていてその下をオーボエやクラリネットがなぞって強調させています。
ゲーム内の重要な戦闘シーンを見て藤原さんは「ひだまり」とはこのシーンのことだと思ったそうです。
藤原さんはこのゲームの本質が善悪ではなく“己とはなんだ”とか、それを知る恐怖や欲望とかそういうところにあると思ったそうで、それを表現した曲になっているそうです。
mirrors
タイトル意味は『鏡』、『カルマ』をピアノと鉄琴で演奏しただけですが、ゲーム内で曲が流れるシーンのセリフがそのまま曲になっていると思いBGMに徹しました。
感動を引き立たせてくれる曲ですね、このシーンを観るとBGMに徹した意味がわかります。楽器は多ければ良いってわけじゃないんですね、個人的にアルバムの中で一番好きです。
finish the promise
タイトル意味は『約束は果たされる』、ピアノリフで出来ていて『abyss』『譜歌』のメロディが曲中に散りばめられています。
繰り返されるフレーズの上にメロディをかぶせていく構成です。ナムコスタッフ曰く「テイルズオブジアビスの根本思想のようなものを知っていないと書けない曲」と評価しています。
譜歌 〜song by Tear〜
『讃歌』のオリジナルであり、ゲームヒロインのティアが歌っています。歌詞は日本語だとしっくりこないとい理由でゲーム内で使われている「フォニスコモンマルキス」という古代言語の使うことに決め、それは文字だけで発音がなかったので藤原さんが独自に作り出しました。
英語とドイツ語の中間みたいな響きをイメージしたそうです。
裏話として、曲を作る際に藤原さんがナムコスタッフさんを夜中にファミレスに呼び出してポテトフライを食べながら打ち合わせをしたそうです。その時ゲームの設定や世界観についてなども詳しく訊いていたようです。
promise 〜live〜
『カルマ』へ繋がる前奏的役割の曲、曲間なしで次の曲『カルマ』が始まる。本当にカッコいいので、通常のカルマしか聴いたことない方はぜひ聴いてみて下さい。
カルマ
BUMP OF CHICKENによる『カルマ』。ついにきたか!みたいな気持ちにさせてくれて、サントラのこの位置に入ることによって『カルマ』という楽曲の世界観が広がったと思っています。
実はオリジナルのものと少しだけ違います。『promise 〜live〜』からの『カルマ』は必聴です!
⇒BUMP『カルマ』歌詞解釈と意味‐人は誰かの場所を奪って生きている‐
ちなみにテイルズオブジアビスのプロデューサーは「カルマ」というタイトルを聞いて「この人、ゲームの世界観わかってるな」と思ったそうです。
abyss
タイトルの意味は『深淵、奈落』。ゲーム中ではタイトル画面で使用されている。藤原さんが『テイルズ オブ ジ アビス』というタイトルを聞いた時に最初に浮かんだ曲で、自分からタイトル画面の曲を書かせてほしいとお願いしたそうです。
譜歌 〜solo〜
「abyss」と「譜歌」を混ぜた曲で締め括りにふさわしいサウンドです。
冒険彗星(おまけ)
アニメのエンディング曲として使用された 榎本くるみさんが歌う『冒険彗星』は藤原基央さんとプロデューサーMORさんによって提供させた楽曲です。サントラには収録されていません。
藤原さんが楽曲提供するのは現在までのところこれ以降されていません。たまに他のアーティストで藤原基央が楽曲提供したんじゃね?と思うようなのはありますが、公式のものはこれだけです。
藤原基央の新たなチャレンジ
『SONG FOR TALES OF THE ABYSS』(ソング・フォー・テイルズ・オブ・ジ・アビス)の楽曲解説をしてきましたが、こうしてみると『カルマ』を元にした楽曲が多いように感じました。
もともとカルマはずっと書きたかったテーマだったせいもあるのか、いろんな形で表現したかったのかもしれません。もしくは、自分からやりたいと頼んだくらいなので、テイルズオブジアビスという世界観が藤原基央の考え方を最大限に引き出してくれる場所だったのかもしれませんね。
ゲームサウンドやオーケストラ、ソロ名義での制作など藤原さんに取っていろんなことの初挑戦だったわけですが、こんなにも彼の才能の幅は広いのかと思い知らされました。
おそらく今後こういったソロ名義での活動はないと思いますが、藤原基央の作る音楽のファンとしてはいつかまたBUMP OF CHICKENではできないような音楽を聴いてみたいものです。