BUMP OF CHICKEN(バンプオブチキン)の楽曲「車輪の唄」(しゃりんのうた)を公式情報を元に解説していきます。この記事では作曲の経緯や歌詞の意味の考察、制作秘話などについてご紹介します。
BUMP OF CHICKENのアルバム『ユグドラシル』楽曲一覧へ
参考資料
・ROCKIN`ON JAPAN 2004年8月号、9月号
・トーキンロック!2004 no.46
・B-PASS 2004.09
・bridge 2013 SPRING
BUMP OF CHICKEN「車輪の唄」の公式情報
BUMP OF CHICKEN「車輪の唄」の基本情報
タイトル | 車輪の唄(9th single) |
カップリング | 夢の飼い主 スノースマイル〜ringing version〜 |
収録アルバム | ユグドラシル(4th Album) BUMP OF CHICKEN I <1999-2004>(Best Album) |
発売日 | 2004年8月25日(アルバム) 2004年12月1日(シングル)※アルバムからのリカットシングル |
完成時期 | |
作詞作曲 | 藤原基央 |
BUMP OF CHICKENの「車輪の唄」は通算9枚目のシングルです。2004年8月25日発売のアルバム『ユグドラシル』に収録され、そこから2004年12月1日にリカットシングルとしてリリースしました。
アルバム版とシングル版で少しアレンジが異なります。
前のシングル | 現在 | 次のシングル |
![]() オンリーロンリーグローリー(8th Single) | ![]() 車輪の唄(9th Single) | ![]() プラネタリウム(10th Single) |
「車輪の唄」の制作背景
初めて使用した楽器
「車輪の唄」はカントリー調の曲で、バンドの新しい試みとして弦楽器のマンドリン、ドラムにはブラシ、ベースはフレットレスベースが使われています。この曲は当時のバンプのバンドスキルからはかけ離れた世界の存在で、曲の望む姿にするためにメンバーがそれぞれやったことのない楽器を演奏しました。
「できる・できない」で妥協するのはもうつまらない、っていうか……もう当たり前なんで、それやるのが
升秀夫
出典:ROCKIN`ON JAPAN 2004.09
藤原は自分たちのことをロックンローラーだとかパンクロッカーだと思っていたらこういう曲を演奏することはなかったと話し、自分たちはただのミュージシャンなんだと痛感したそうです。
一晩で書き上げた歌詞とメロディ
「車輪の唄」を書き上げる前はちょうど同じアルバム『ユグドラシル』に収録の「レム」を書いていました。レムは朝書き始めて夜には完成しましたが、実際に聴いてもらうとわかりますが歌詞の内容がきわどかったので、内容が大丈夫かどうかプロデューサーに電話で確認しました。
BUMP OF CHICKEN「レム」の楽曲情報と歌詞の意味へ
プロデューサーからは「お前が良いと思っているなら明日録ってみよう」と言われ藤原は翌日デモを録る予定を入れ、寝ようとしますが眠れませんでした。
そこでなんとなくギターを弾いていたらできたのが「車輪の唄」でした。一晩で歌詞もメロディも完成させています。
チャマに付きっきりだった藤原
この曲のアレンジはリズム隊の升、直井が大変苦労したそうです。普通ならリズム隊は先にレコーディングして帰るという流れでしたが、この曲に関しては直井の隣に藤原さんが付きっきりで行いました。
というのもベースが少しでもズレると歌が全然きれいに響かなかったからです。そこで直井は藤原に貪欲に質問しまくりました。直井は曲のベース担当としての和音構成員として責任を果たそうとしたのです。
「車輪の唄」はラブソングではない
「車輪の唄」はよくBUMP OF CHICKENのラブソング候補として挙げられる曲ですが、これは作詞者の藤原基央が公式に否定しています。
バンプのどの曲にも言えることですが、「曲の解釈は人それぞれでいい」とコメントしていますが、藤原さんの中では明確が答えがあるようです。
ちなみに歌詞の物語も自身の恋愛体験が元になっているわけではないそうです。
別に、どう受け取ってくれても構わないんですけど。まあ、訊かれれば違うことだから「違う」って言うしかないですね
藤原基央
出典:bridge 2013 SPRING
BUMP OF CHICKENはラブソングをあまり歌わないと言われていますがそんなバンプにも公認している恋愛がテーマのラ…
小ネタ
「銀河鉄道」の歌詞とリンクしている
シングル「プラネタリウム」のカップリングに収録の「銀河鉄道」の物語と「車輪の唄」の物語が一部リンクしていていて、同じ登場人物が出てきます。
ユグチャリ紐
ユグチャリ紐
・「車輪の唄」の初回盤には抽選で「ユグチャリ紐」が当たる応募用紙がついていました。
車輪の唄のMV情報
車輪の唄のMV情報 | |
監督 | 番場秀一 |
撮影場所・ロケ地 | 里美村(茨城県) 参考サイト |
出演 | BUMP OF CHICKEN、他 |
「車輪の唄」のMV(PV)は、とある男の子と女の子の物語を、田舎町の風景の中で素朴に描いた作品になっています。田舎町の撮影場所は茨城県の里美村だと言われています。
BUMP OF CHICKEN「車輪の唄」の歌詞の意味
「車輪の唄」の歌詞の内容
別々の道を歩む二人
「車輪の唄」は「同じドアをくぐれたら」、「スノースマイル」、「ロストマン」などと同じように、ユグドラシル期に多くみられる“ルート分岐構造”をしています。
藤原はこの曲がどういう曲なのか自分でもわかっていないと答えていますが、一晩であっさり書き上げているので手癖のような感じで当時の考え方が出たと思われます。
2人乗りで自転車を漕いで駅まで向かい、自分の道を進む《君》と、取り残された《僕》という別々の道を歩むことになった二人が描かれています。これは「スノースマイル」で《君》のいない道を進むことになった《僕》と似た構造をしています。
違うところは二人の立場が逆転していることです。「車輪の唄」では《君》が自分の道を進むことになり《僕》が取り残されています。
同じドアをくぐることはできない
駅までは同じ車輪の上にいる二人でしたが、駅で二人のルートは分岐しそれぞれ違う車輪に運ばれることになります。《君だけのドアが開く》と表現しているので君が電車に乗ることは自分の道を歩むといった比喩的な意味合いがあることがわかります。このフレーズは「同じドアをくぐれたら」を彷彿させます。
君を見ようとしない僕
「車輪の唄」の特徴ともいえるところが、歌詞中で《僕》は頑なに《君》を見ようとしないことです。
・振り返ることが出来なかった
・目は合わせないで頷いて
・答えられず俯いたまま
「いつの日かまた会おう」という君の別れ際に放った言葉にさえ、目を合わせずに決まりが悪そうに手を振る僕。これは僕を置いて自分の道を進む君に対してあまり快く思っていないからです。
作業的にカバンの紐を外す僕
“目は合わせないで頷いて
頑なに引っ掛かる 鞄の紐を 僕の手が外した”「車輪の唄」/BUMP OF CHICKEN
《僕の手が外した》という表現は自分の意志ではなく、あたかも他人がやったかのような言い方です。
おそらく君が寂しそうな素振りを見せることなく、旅立とうとしているので僕は嫌われているんじゃないかという不信感を持ったのだと思います。だから目を合わせ辛かった。「また会おう」という君の言葉にも返事ができなかった。
顔を見なくてもわかる君の表情
電車が出発した後で僕は君が泣いていたことに気付きます。
“泣いてただろう あの時 ドアの向こう側で
顔見なくてもわかってたよ 声が震えてたから”「車輪の唄」/BUMP OF CHICKEN
このことで君は本当は寂しかったんだということに気付き、僕は自転車で電車を追いかけ、さっき言えなかった言葉を君に伝えます。
そして最後は自転車に君の《微かな温もり》が残って物語は幕を閉じます。
温もりは《君》がいた確かな証拠
温もりは君がいたことの証明であり、同時にもう少しで温もりが消えてしまうことがわかります。これは「オンリーロンリーグローリー」でも言ってるように、微かな温もりが消えた後に再び君の温もりに出会うための希望と約束の象徴だと思われます。
“一人に凍える この手が 温もりと出会う為の光”
「オンリーロンリーグローリー」/BUMP OF CHICKEN
温もりについては「embrace」をはじめユグドラシル期に多くみられるテーマで、寒さを感じたら温もりに触れたがるという人間の本質を表していて、「車輪の唄」では再会を象徴するキーワードとして使われています。
車輪の唄で伝えたいこと
見えているものだけが真実ではない
主人公である僕は君のことを見ることなく、声や温度から君の様子をうかがっています。
これは見えているものだけが真実とは限らないという、これまでも“見えないモノ”を歌ってきた藤原基央が歌詞に仕掛けたメッセージではないかと思います。
オレが歌っていて背中で叩いている升の姿なんて見れるわけがないんだけども、オレは知ってるんですよ。升がどういう表情で叩いているのかを、要はそういうことです
藤原基央
出典:トーキンロック!2004 no.46
BUMP OF CHICKEN「車輪の唄」のライブ情報
「車輪の唄」のライブ演奏記録
初披露日時 | 初披露ライブ |
2004年9月17日 | MY PEGASUS@Zepp Tokyo (東京都) |
演奏頻度 |
「車輪の唄」のライブ映像が収録されている作品
収録作品 | 備考 |
![]() 結成20周年記念Live「20」 | 5曲目に収録。 |
![]() “BFLY” | 13曲目に収録。 |