タイトル | 睡眠時間(カップリング) |
収録アルバム | present from you(4th) |
発売日 | 2008年6月18日(アルバム) 2004年7月7日(シングル) |
カップリング | オンリーロンリーグローリー |
作詞作曲 | 藤原基央 |
BUMP OF CHICKEN(バンプオブチキン)の楽曲「睡眠時間」(すいみんじかん)を公式情報を元に解説していきます。この記事では作曲の経緯や歌詞の意味、制作秘話などについてご紹介します。
参考資料
・ROCKIN`ON JAPAN 2004年8月号、2008年6月
・MUSICA 2008年7月号
・bridge 2004年SUMMER
楽曲解説
概要
「睡眠時間」は藤原基央による弾き語りの曲で「オンリーロンリーグローリー」が完成した時に、ストック曲の中にカップリングに相応しい曲調のものがなかったの為に藤原さんがカップリング用に書き下ろしました。
“「睡眠時間」はカップリングになるために生まれてきた曲ですね”
藤原基央
出典:bridge 2004 SUMMER
時を同じくして藤原さんの祖父がガンで入院し、亡くなる前に聴かせたいと思い書いた曲が「睡眠時間」で、「オンリーロンリーグローリー」との相性の良さからカップリングに収録されました。
藤原基央の祖父へ贈った曲
「睡眠時間」は2004年5月頃に制作され、藤原さんの父方の祖父(「魔法の料理」に登場するひげぢいとは違う)の為に作られた楽曲です。ガンを患った藤原さんのおじいさんは死期を悟り、もう助からないことにも気付いていました。
藤原さんが「早く元気になってね」と伝えると、おじいさんは笑いながら「なれたらいいけど、たぶん無理だなあ」と否定し、死を受け入れていました。
そこで藤原さんはおじいさんが亡くなる前に恩返しも兼ねて曲を書くことにしました。
「俺は多分死ぬな」って俺の目の前で言ってのけたおじいちゃんにも、「おやすみ」を言う必要があったんですよね
藤原基央
bridge 2004 SUMMER
“ド”で始まり“ド”で終わる曲
この曲は藤原さんがあるルールを決めて作曲しました。それは“ド”で始まり“ド”で終わる形に仕上げることでした。
藤原さんのおじいさんはトランペットを演奏していたこともあり音楽の知識がある人でした。昔の音楽は“長調”と呼ばれるドで始まりドで終わるという決まりがあったらしく、最近はそういう決まりがないから藤原さんのおじいさんは最近の音楽がよくわからなかったようです。
“「ドで始まったらドで終わるって決まってたもんだけれども、最近の曲はそうでもないから、なにやってんだかよくわかんないのもいっぱいあるなあ」みたいな”
藤原基央
出典:ROCKIN`ON JAPAN 2004.08
藤原さんは曲がちゃんと伝わるように、おじいさんに馴染みのある「ドで始まりドで終わる曲」、そして聴き取りやすいようにBPMがゆっくりのもの、歌詞を詰め込み過ぎないようにルールを決めて制作しました。
ひと言「おやすみ」と言いたかった
藤原さんが曲を完成させると、今度は歌詞で何を伝えたいのかを寝る時に考えました。すると昔は寝る前にいろんなことを考えたりしていたことを思い出しました。
布団に入ってベッドが船になる妄想だったり、時計の針の音が気になったり、親が自分よりも早く死んでしまうこととか、寝る前はいろんなことを考えて、「寝るのがもったいない!」、「寝てる場合じゃない!」という気持ちになったそうです。
けれども、おじいさんは寝てしまう。だから何を伝えたいとかではなく、ただ「おやすみ」と言えればいいということに気付いて歌詞を完成させました。※詳しい解説は【歌詞の意味】の頁でご紹介します
“おじいちゃんは寝るわけですよ。だから、なにを伝えたいとかそういうことではなくて俺は、一言「おやすみ」と言えればいいんだなぁと”
藤原基央
出典:ROCKIN`ON JAPAN 2004.08
大きな力を感じた藤原
「睡眠時間」のレコーディングが終わり、その後、バンプの故郷の千葉県佐倉市でフリーライブが行われました。ライブの模様はスペースシャワーTVで放送され、藤原さんのおじいさんはそれを見たいと言いました。
しかしその願いは叶わず、おじいさんは翌日に亡くなってしまいます。
実はこのライブの時に藤原さんは突然「カメラ目線をやりたい」と言ってメンバーも驚いていたのですが、もしかしたらおじいさんが見てると思い、やったのかもしれません。(この時メンバーはまだ藤原さんの事情を知りません)
藤原さんはタイトなスケジュールの中、秋田に帰り葬式に参列しました。詰め詰めのスケジュールにもかかわらずなんとか出棺に間に合い、歌詞と睡眠時間のCDを棺桶に入れて火葬することができました。
そして火葬場で藤原さんはハーモニカで「睡眠時間」を演奏しました。偶然にもハーモニカの音階の中で吹ける曲でした。
いつもは信仰深くない藤原さんですが、ライブの後におじいさんが亡くなったこと、葬式に間に合ったこと、睡眠時間がハーモニカの音階で演奏できる曲だったこと、などいろんな偶然が積み重なって、その時ばかりは大きな力が働いているとしか思えなかったそうです。
“俺、全然信心深くないんですけど、あの時ばかりはちょっとなんかねえ、理解を超えた力が働いてるとしか思えない”
藤原基央
出典:ROCKIN`ON JAPAN 2004.08
さらにちょうどその頃「オンリーロンリーグローリー」のカップリング曲の締め切りがあった時で「睡眠時間」が丁度よく相性が良い曲だったのでカップリングに決まりました。それも含め全てのタイミングが完璧だったようです。
歌詞の意味
ララバイ(子守歌)
「睡眠時間」は楽曲解説で書いた通り、藤原さんが死期を悟ったおじいさんにおやすみを言う為に作ったララバイ(子守歌)です。しかし世の中へ発信したからにはリスナーに聴かれる役割を持っているので、作曲のきっかけはおじいさんでしたがバンプオブチキンの曲として聴いてほしいと話しています。
歌詞の内容は藤原さんが実際に子供頃に感じた感覚がそのまま詞になっています。
寝る前に布団の中でいろんな妄想をして楽しくなって寝るのがもったいない!ってことや、自分より年上の家族は普通なら自分より先に死んでしまうなんてことを考えて家族との時間を大切にしなきゃ!なんて考えたりすることって誰でもあると思います。
“眠るのが恐くなって 左の胸 手を当てた
ぎゅっと閉じた まぶたの裏に 浮かべた愛しい人の顔”「睡眠時間」/BUMP OF CHICKEN
藤原さんはそんなことから「寝るのがもったいない」、「睡眠によって大事なものが奪われている」という気分になったことがあるそうです。
また、眠れない夜にふと時計の針の音が異様に気になったり、自分の呼吸に意識が向いたら呼吸がうまくできなくなって苦しくなって、このまま死んじゃうんじゃないかとか本気で思ったこともあるそうです。
“呼吸を意識すると呼吸がしづらくなる現象。あと時計の音がやたらと気になってしまう現象。それって、生命体として、人間としてすごく象徴的なことだなと思ったんです”
藤原基央
出典:bridge 2004 SUMMER
あなたを僕の中へ
生命体には必ず最後に死がやってきます。そういう時間制限がある中で睡眠は有効な時間なのか?無駄な時間なのか?自分がいつまで生きれるのか?あの人はいつまで生きてくれるのか?そんなことはどうやっても答えは出ません。
唯一わかってることは、けっきょく人間は寝るということです。
“生きてる人間はみんな寝るんだなっていうか、そういうララバイを歌ってあげたかった”
藤原基央
出典:bridge 2004 SUMMER
藤原さんは呼吸を意識すると呼吸がしづらくなるように、生命としての機能に逆らわずに眠い時は寝ていいんだよと言いたいのだと思います。
きっとどんな悩み事も妄想も続きは寝てからでいいじゃないかと、そういう意味で「おやすみ」と言いたかったんだと思います。
歌詞の最後のフレーズは、これからいなくなる人が自分の思い出の中で眠るという意味だと思います。
“おやすみ あなたを 僕の中へ”
「睡眠時間」/BUMP OF CHICKEN