BUMP OF CHICKEN(バンプオブチキン)のアルバム『ユグドラシル』を公式情報やインタビューを元に解説していきます。この記事ではアルバムの解説やタイトルの意味の考察、制作背景などについてご紹介します。『ユグドラシル』の楽曲を聴く際に参考にして下さい。
参考資料
- ROCKIN`ON JAPAN 1月号、8月号、9月号
- B-PASS 2004年9月号
- トーキンロック! 2004年9月号
- bridge 2004年8月号
BUMP OF CHICKENアルバム『ユグドラシル』公式情報
アルバム『ユグドラシル』基本情報
タイトル | ユグドラシル(4th Album) |
発売日 | 2004年8月25日 |
制作期間 | 2002年1月~2004年7月頃 |
収録曲集 | 14曲(シークレット除く) |
アルバムツアー | MY PEGASUS、PEGASUS YOU |
BUMP OF CHICKENの「ユグドラシル」は通算4枚目(メジャー2枚目)のアルバムです。2004年8月25日にトイズファクトリーから発売されました。
アルバム制作期間は2002年1月に作詞が始まった「ロストマン」から2004年7月頃に完成した「asgard/midgard」までの約2年半になります。
ジャケットのイラストは藤原基央が描いたもので、原画はプロデューサー宅にて保管されています。
前のアルバム | 現在 | 次のアルバム |
jupiter | ユグドラシル | orbital period |
アルバム『ユグドラシル』収録曲
トラック | タイトル | 概要 |
1 | asgard | アルバムのオープニング曲で、タイトルの意味は北欧神話に登場するアース神族の国のこと。 「midgard」と全く同じ音だが、エンディングよりも遠い所で音が鳴っている。 |
2 | オンリーロンリーグローリー | 【7th Single】 2004年7月7日発売シングル版と違いアルバム版はイントロにコーラスが加えられている。 |
3 | 乗車権 | オープニングとエンディングを除きアルバムの中で一番最後に制作された楽曲。たいした覚悟も無しに夢の先へ連れ行くバスに乗ってしまった主人公を描く物語。 |
4 | ギルド | 人間でいることを《人間という仕事》とデフォルメして表現した作品。2003年11月末、スタジオでのレコーディングの合間に、藤原がギターの弦を張り替える僅かな時間で歌詞を完成させた。 |
5 | embrace | バンプ公式ラブソングのひとつ。《確かなものは温もりだけ》という藤原の考えが表われた楽曲。 レコーディングに増川は不参加。 |
6 | sailing day | 【5th Single】 2003年3月12日発売映画「ワンピース デッドエンドの冒険」主題歌。バンプ初の映画タイアップであり、初の書き下ろし作品。 |
7 | 同じドアをくぐれたら | バンドで初めてマンドリンが使用された曲。作詞者である藤原が「天秤をテーマに曲を書いてみたかった」と話し、ボクシングでは勝った方が腕を上げるのに対し、天秤は重要でない方が上に掲げられることに驚いていた。 レコーディングに増川は不参加。 |
8 | 車輪の唄 | 【8th Single】 2004年12月1日発売「車輪の唄」は後にアルバムからリカットされ8thシングルとして発売された。 |
9 | スノースマイル | 【4th Single】 2002年12月18日発売ラブソングに聴こえるが、藤原はそれを否定しており「スノースマイルというタイトルを付けた時にラブソングじゃなくなった」と話している。 |
10 | レム | 藤原基央単独による弾語りの曲。藤原が殺人鬼の気持ちで作曲しており、「とどめを刺したいものがあった」と話している。 |
11 | fire sign | ギターの増川の誕生日に藤原が贈った曲。歌詞の内容は、当時、ギターのスキル不足やバンドを脱退するかで悩んでいた増川へ向けた言葉であると言われている。 |
12 | 太陽 | 本当の意味で“触れる”、“触れられる”ということの怖さを表現した曲で、《壊れかけのドアノブ》が一度外に出たら戻れないという決意の象徴になっています。 |
13 | ロストマン | 【5th Single】 2003年3月12日発売(sailing dayとの両A面シングル)藤原が“思い出を切り取る”ということを表現した曲で、作詞に9ヶ月もの歳月を要した。以降は滞りなく作詞しており、この曲は藤原の作詞家としてのターニングポイントでもあった。 |
14 | midgard | アルバム「ユグドラシル」のエンディング曲で、タイトルは北欧神話に登場する“人間が住む国”のこと。 「asgard」と全く同じ音だが、オープニングよりも近い所で音が鳴っている。 |
隠し | O・TO・GA・MEはーと | 激しぶBOYS:升秀夫、増川弘明 司会:直井由文 ナレーション:藤原基央 |
作曲の順番
アルバム『ユグドラシル』の特徴
ユグドラシルの意味
出典:Wikipedia
『ユグドラシル』とは北欧神話に登場する、9つの世界を内包する世界樹のことです。タイトルの考案者は藤原で、アルバムのタイトルは木の名前にしようと決めていました。「ユグドラシル」という言葉自体は「グングニル」の時から知っていましたが深い意味はなく、言葉の響きが良いという理由で決めました。
偶然にもアルバムの世界観と一致
『ユグドラシル』に収録される楽曲は、枝分かれする道でそれぞれが別々の道を歩くという「ルート分岐構造」を持っているものが多いですが、偶然にも“9つの世界を内包する木”と重なる部分があります。
スキルアップしたサウンド
アルバムの特徴と言えるのが、前作『jupiter』よりも格段とスキルアップした演奏力と表現力の高まったサウンドです。「embrace」の頃から、“曲の求める形で音を鳴らす”というスタンスに本格的になっていき、メンバーは自分達の音楽と向き合うことに覚悟を持ち始めました。
「同じドアをくぐれたら」ではバンドで初めてマンドリンが使用され、藤原は意図的にメンバーへ向けて音楽と向き合う覚悟を要求する楽曲に仕上げました。
“同じドアをくぐれたら”を書いた時にもう意図的に、ちゃんと覚悟しなきゃプレイできねえような曲にしてしまえ、と思って
藤原基央
出典:ROCKIN`ON JAPAN 2004.08
アルバム『ユグドラシル』の制作背景
アルバム『ユグドラシル』には2002年12月にリリースされた「スノースマイル」から、2004年7月頃に作られた「asgard/midgard」まで収録されています。
曲順は曲名を書いた短冊を作り、手作業で並べるという方法で決めていきました。「ロストマン」の順番が最後になったのは、「ロストマン」は他の楽曲のテーマをまとめた集合体だからだと話しています。
曲の求める形
前作『jupiter』では勢いや情熱に任せて音を鳴らしている部分が多かったのに対し、『ユグドラシル』では演奏技術や表現力のスキルアップを図りました。
「embrace」の頃から、“曲の求める形で音を鳴らす”というスタンスに本格的に変わっていき、メンバーは自分達の音楽と向き合う覚悟を持ちました。それゆえ制作期間はソロでの練習が多くなり、レコーディング中の口数も減っていきました。
レコーディングに参加していない増川
メンバーが曲と向き合い始め、バンド内の空気が変わる中でギターの増川弘明はスキル不足の為、「embrace」と「同じドアをくぐれたら」のレコーディングに参加させてもらえませんでした。
俺は……アルバムのレコーディング始まって、レコーディングに俺の音は入ってないんですよ。参加してないの。辛い。でも今はそれを感謝できる
増川弘明
出典:ROCKIN`ON JAPAN 2004.01
今まで仲良しバンドでやってきた彼らが、プロのミュージシャンとしての意識に変わった時期とも言えます。
バンド決裂の危機
2003年はバンドのプライベートでいろいろあった時期で、ファンの間では増川の脱退問題があったと噂されています。
先ほど説明したように増川は自分のスキル不足を認めており、大学とバンドの両立が難しくて脱退を考えていたと思われます。他にも定かではありませんが、結婚の話もあったのではないかと言われています。
以前のインタビューですごく話しづらそうにしてたじゃないですか、メンバーが。いろいろ言えないプライベートのことがあった、みたいな
藤原基央
出典:ROCKIN`ON JAPAN 2004.08
「fire sign」はそんな悩んでいた増川に藤原が贈った曲だと言われています。
BUMP OF CHICKEN「fire sign」の楽曲情報と歌詞の意味へ
直井の増川に対する態度
「ROCKIN`ON JAPAN」の2004年1月号のインタビューでは、バンドのプライベートでの出来事を藤原を除く3人で話していて、増川に対する直井の態度が明らかにおかしいのがわかります。
深まる4人の絆
バンド内でいろいろあったバンプオブチキンでしたが、そういった経緯があり、お互いが心を晒し合うタイミングでした。1人1人が言いたいことをぶつけ、プライベートのことも包み隠さず打ち明けたことで4人の関係が強固になったと増川は話しています。
どれだけ仲良くても、本音を隠したままの関係ではいつかほころびができる。本音をぶつけ合わずに、ずっとなあなあで過ごしていたらバンプオブチキンは今日まで続いてなかったでしょう。
友情にかまけるような関係性で音楽やってたらそのうち音楽じゃなくなってくると思うし
藤原基央
出典:bridge 2004.08
テーマの変遷
ユグドラシル期からorbital period期へ
アルバム『ユグドラシル』を世に放ち、2005年には9枚目のシングル「プラネタリウム」をリリースし、orbital period期に突入します。
“28年周期”という意味を持つ「orbital period」はメンバー4人が一緒に28年というひとつの周期を過ごすことができたという感動から付けられたタイトルです。
そのタイトルになった背景には、やはりユグドラシル期にあったバンド内の揉め事を通して、4人が一緒にいれることは当たり前じゃないと気付いたからだと思います。