【BUMP】流れ星の正体の歌詞の意味‐全てはたった一人の零した涙を掬うため‐

BUMP OF CHICKEN(バンプオブチキン)の楽曲「流れ星の正体」(ながれぼしのしょうたい)を公式情報やインタビューを元に解説していきます。

この記事では楽曲の公式情報や歌詞の意味の考察、どういった経緯で作曲されたのかなどの制作背景などについてご紹介します。「流れ星の正体」を聴く際に参考にして下さい。


参考資料

  • ROCKIN`ON JAPAN 2017年7月号、2019年8月号
  • B-PASS 2017年3月号
  • CUT 2019年7月号
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BUMP OF CHICKEN「流れ星の正体」の公式情報

「流れ星の正体」の基本情報

タイトル流れ星の正体
発売日2019年7月12日
作詞作曲藤原基央
完成時期2017年1月20日(1コーラスのみ)
2017年1月中にフル完成
収録アルバムaurora arc(9th Album)
タイアップ

BUMP OF CHICKENの「流れ星の正体」は2017年1月27日発売の雑誌「B-PASS」で、連載されていた藤原基央のコラム「Fujiki」(ふじき)の最終回で歌詞が初公開されました。

翌日の28日未明から同年1月30日の23:59までYouTubeにて期間限定で藤原による1コーラス弾き語りと手書きの歌詞だけのリリックビデオが公開されました。2019年4月11日にはYouTubeとbumpofchicken公式インスタグラムで藤原基央の弾き語り映像を公開。

BUMP OF CHICKEN「aurora arc」のアルバム楽曲情報と制作背景へ

「流れ星の正体」の制作背景

藤原基央のコラム「fujiki」最終回

音楽雑誌「B‐PASS」の1999年10月号より始まった藤原基央のコラム「Fujiki」(ふじき)が2017年3月号を持って最終回を迎えることになりました。

コラムを書こうとしたら生まれた歌詞

2017年1月19日の深夜から20日の朝方にかけて藤原は自宅にて最終回となる「Fujiki」第154回のコラムの内容を考えていました。しかしFujiki第100回の時と同じようなことしか思いつかず「これではいけない!」と思った藤原は頭に浮かんだ言葉を一つ一つ紙に書いていきました。

するといつの間にか詩のようになり、ギターを取り出して歌っていたら曲になっていた。こうしてできた曲が『流れ星の正体』です。

出典:Fujiki第154回最終回

自分とコラムを支えてくれたお客さんとの物語という意味でメンバーよりも先にお客さんに聴いてほしかったそうです。

Fujiki最終回を書いたあと、曲を完成させる為に2,3日スタジオを取ってもらい、すぐにフルコーラスが完成しました。

もうフルコーラス書けてるんですよ。だから、なんでフルコーラス聴いてもらえてないんだろうみたいな(笑)”それも今は早く聴いてもらいたいなと思っています

藤原基央
出典:ROCKIN`IN ON JAPAN 2017.07

そしてなんと『流れ星の正体』が完成した日の余った時間で『リボン』のフルコーラスも完成しています。

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「流れ星の正体」の期間限定公開のリリックビデオ

流れ星の正体の期間限定ビデオ出典:YouTubeより引用

2017年1月28日から同年1月30日の23:59までYouTubeにて期間限定で藤原基央によるボーカルとギターだけのリリックビデオが公開されました。

手書きのリリックビデオのアイデアは周りが出してくれて、元々藤原は自分の字が下手なのでいつもなら手書きなんて恥ずかしいとなるところが、「Fujiki」のコラムが手書きだったのでリリックビデオも手書きの方がコラムに近い温度感になると思い藤原さんはその案を受け入れました。

fujikiと同じような温度感のリリックビデオ

出典:YouTubeより引用

「Fujiki」はほとんどが毎回手書きで、ニコルも余白に描かれていました。リリックビデオの歌詞の間違いをニコルといっしょに描くのもFujikiらしさが出ています。歌詞の間違い手書きで訂正したのは、それだけファンに早く届けたいというスピード感を大切にしていたんでしょうね。

服着る前の素っ裸な状態みたいなところをお客さんに聴いてもらえたことは、とても自分としても嬉しかったです

藤原基央
出典:ROCKIN`IN ON JAPAN 2017.07

アレンジ前の曲を披露するのは珍しいこと

通常は私たち一般人のもとに届く曲はアレンジされた状態です。なので生まれたてほやほやのアレンジで着飾っていない曲を聴けたことはほんとにレアです。PATHFINDERツアーファイナルで『Spica』の弾き語りやったことも非常に珍しいことでした。

「Spica」の楽曲情報と歌詞の意味へ

流れ星の正体のMV情報

流れ星の正体のMV情報
監督林響太朗
出演唐田えりか、他
MV初公開日2019年7月16日

「流れ星の正体」のMVは「Aurora」に引き続き、林響太朗氏が監督を務めました。

それぞれの日常の尊く儚い一瞬を切り取ったような映像で、その一つ一つのシーンが喋らずとも何かを物語っているような印象を受けました。登場人物の一人一人が何を考えているんだろうとその背景を考えながら見入ってしまいました。



BUMP OF CHICKEN「流れ星の正体」の歌詞の意味

流れ星の正体を書いたきっかけ

「流れ星の正体」の歌詞は、

1番が“曲を書く動機”を書いていて、

2番は“曲がリスナーにどう機能してほしいか”

を書いた構成になっていると藤原さんが公式にコメントしています。

B-PASSで連載していた「Fujiki」というコラムに、リスナーからのお便りを幾つも貰ってそれに何度も勇気付けられたと話す藤原さん、そういうみんなからの声が自分に取ってどういう意味を持っているのか?それを踏まえて自分の歌がどうリスナーに機能してほしいかということを歌った曲になっています。

藤原基央が曲を書き続ける理由

いつも迷路 終わらないパレード 止まったら溺れる
ゴールなんてわからないままで いつまで どこまで

「流れ星の正体」/BUMP OF CHICKEN

音楽という答えのない作業を続けることは、ゴールのわからない迷路を歩き続けるようなもので、それには不安や恐怖が付き纏うことだと上のフレーズでは歌っています。

では、答えのない作業の正しさとは一体なんでしょう?

音楽で正しいことをしていると思える瞬間は、リスナーが曲に反応してくれた時なのです。

考えてもみて下さい。答えのない道を進む時に誰かが寄り添ってくれたり、自分を理解してくれようとしたり、応援してくれたら、それだけでその道を進み続ける勇気にならないでしょうか?

音楽という答えのない作業に「正解」を与えているのは他ならぬリスナーなのです。

お便りをくれた人は、それがどれだけ俺の力になっているかなんてわかってないから。「全然曲書けねえ」とか「自分はなんなのかな」とか思うような時、僕はとりあえずお便り読んで、連載を書こうとしてきたんです

藤原基央
出典:CUT 2019 JULY

バンプの音楽は誰かの涙を掬う歌

大勢いる中の一人へ向けた歌

「流れ星の正体」に限らずバンプの曲は“全体の中の一人”を意識しています。特に近年の曲は「アリア」、「記念撮影」、「話がしたいよ」の歌詞からもわかるように、日常の風景や些細な悩みを切り取っていて、かなり細分化された一人を描いています。

「望遠のマーチ」で《皆集まって 全員ひとりぼっち》と歌っているように、私たちは同じ人間でありながら、それぞれが違う考えや価値観を持った違う人間です。

誰もが抱えている“どうやっても分かり合えない心の奥にある気持ち”、それを持っていることによって生まれる他者の違いや孤独感。藤原基央はこういった一人一人の孤独を理解し、向き合おうとしてるのです。

君が未来に零す涙が 地球に吸い込まれて消える前に
ひとりにせずに掬えるように 旅立った唄 間に合うように

「流れ星の正体」/BUMP OF CHICKEN

この歌詞にBUMP OF CHICKENの一貫した音楽のメッセージが込められています。

バンプの歌詞は決して背中を押してくれる歌詞ではありません。自分で自分の価値に気付いて、自分で自分の背中を押す歌詞なのです。

《涙を救う》のではなく《涙を掬う》

涙を助けてあげるのではなく、自分で涙を掬い上げてその価値に気付かせてくれる歌詞なのです。

曲の最後のフレーズには、「あなたがどんな些細な悩みを抱えていても、どんなに暗闇に紛れて隠れていても、必ず見つけ出してやる!」という藤原基央の強い気持ちが表われています。

太陽が忘れた路地裏に 心を殺した教室の窓に
逃げ込んだ毛布の内側に 全ての力で輝け 流れ星

「流れ星の正体」/BUMP OF CHICKEN

光らなかったザイロバンド

ちょっと話が逸れますが、私が「WILLPOLIS 2014」の東京ドーム公演に参加した時に、配られたザイロバンドが光らなくてとてもショックだったのを憶えています。

光らなかった人は他にも何人かいると思いますが、あの時の私は「なんで5万人もいて、自分のだけ光らないんだろう」と自分の不運さを呪いました。

しかしある日、雑誌のインタビューで藤原さんのこんなコメントを目にしました。

藤原「ザイロバンドが光らなかった人がいること、オレはちゃんと知ってるからね」

これを読んで私はただただ嬉しかった。あの5万人の光に埋もれた影のような私の存在に気付いてくれている気がして、すごく単純だけど嬉しかった。

この人達はずっと変わらず、影に隠れてしまった人にも届く音楽を作っているのだと気付かされました。だから彼がいつも言っている「1対1の音楽」とは、噓偽りない言葉なんだと信じることができました。



流れ星の正体とは何なのか?

君と僕にだけ見えるモノ

現実世界における“流れ星の正体”とは、宇宙空間に漂う“塵”が地球の大気とぶつかり光を放ったものです。そしてその塵は燃え尽きた後に、地球の大気の一部となります。

BUMP OF CHICKENの「流れ星の正体」でも似たようなことが歌われています。

どんな事もこんな熱も街にまぎれる

「流れ星の正体」/BUMP OF CHICKEN

つまり、藤原さんがどれだけリスナーのことを考えて熱い思いで曲を作っても、リスナーがどれほど熱い思いを藤原さんに送ったとしても、世界には関係の無い、取るに足らないことです。

でも私達はこの「流れ星の正体」を聴いて、藤原さんがどんな思いで曲を書いているのか、リスナーの存在にどれだけ勇気を貰っているのか知りました。

世界の誰にも見えないけど、私達と藤原さんにはお互いの気持ちが見えています

皆ではなく、気持ちを知っている僕らにしか見えないもの、これが“流れ星の正体”です

流れ星の正体を僕らは知っている

「流れ星の正体」/BUMP OF CHICKEN

藤原基央の40年分のドキュメンタリー楽曲

「流れ星の正体」とは、気持ちを知っている二人だけにしか見えないモノ。

藤原基央が「天体観測」で歌っていた“見えないモノ”に出会うことができた、なんて言うつもりはありません。だって彼の歌っていることは、あの頃と何も変わっていないのだから。

藤原基央が生きることに対し途方に暮れていた頃

藤原基央は周りと馴染めず高校を中退して「自分って何なんだろう」「生きる意味ってなんなんだろう」と食事中に無意識に涙が流れてくるほど人生に迷っていた時がありました。

きっと今の彼が歌うその先には、途方に暮れていた“あの頃の自分”がいるんだと思います。彼が歌う理由は、その時の自分の涙を無駄にせずに掬ってあげたいという想いなのでしょう。

出典:Pictas

あの頃から丁寧に積み上げた一つ一つがあって、今のBUMP OF CHICKENがある。だから彼は、何万人を相手にしようと“一人”の尊さを忘れない。

そして彼は周りの人と違うという孤独の辛さ、尊さを誰よりも知っているからこそ、一人に向けた曲が書けるのです。弱者とも言われる、日の当たらない影にいる人の小さな声をずっと聞いていたのです。

「流れ星の正体」は藤原基央の40年の想いを詰め込んだドキュメンタリーと呼ぶべき作品でしょう。

飛んでいけ 君の空まで 生まれた全ての力で輝け

「流れ星の正体」/BUMP OF CHICKEN

追記:藤原さんの高校を辞めた時のエピソードは「ガラスのブルース」の記事でも触れていますので、よろしければ合わせてご覧下さい。

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