完成時期 | 1999年秋‐2000年春 |
収録アルバム | THE LIVING DEAD |
発売日 | 2000年3月25日 |
作詞作曲 | 藤原基央 |
BUMP OF CHICKENの『グングニル』はバンプのアルバム『THE LIVING DEAD』に収録されている楽曲です。
発売から2003年頃までは頻繁にライブで演奏されていて、当時のバンプの代表曲と言える楽曲です。
それでは楽曲解説と歌詞の意味を解釈していきます。
BUMP OF CHICKEN「グングニル」の公式情報
グングニルの元ネタはFF(ファイナルファンタジー)
画像:YouTube
ゲーム好きでも知られる藤原さんですが、グングニルというタイトルはFF(ファイナルファンタジー)に出てくる武器から思いついたものでした。
“グングニル”ね、ファイナルファンタジーやってて、グングニルって武器出てきて。槍なんですけど。グングニルって2番目に強い武器で。その上にロンギヌスっていう武器があって
藤原基央
出典:ROCK‘IN ON JAPAN 2000.06
藤原さんが言ってるのはおそらくFF4のことで、正確にはグングニルはカインの武器である槍の中で3番目に強い武器です。(あー懐かしい)そしてロンギヌスの槍は別なシリーズに登場する最強の槍です。
藤原さんがプレイしていたのはスーパーファミコン版ですが、FF4はスマホアプリでも気軽にプレイ(有料)できますので気になった方はぜひ♪
グングニルについて母親に調べさせる藤原基央
FFでグングニルの槍の存在を知った藤原さんですが、ロンギヌスの槍についてはキリストを処刑した人の名前が付いていることや、アニメ「エヴァンゲリオン」にも同名の槍が登場していて、ある程度知識を持っていました。
エヴァンゲリオンより 画像:livedoor Blog
そこで藤原さんはグングニルにもロンギヌスの槍のようなサイドストーリーがないか気になり、お母さんに電話しました。
藤原「グングニルって槍をインターネットで調べてくんない?」
お母さんがね、すっごいね、モバイラーなんですよ。モバイルを駆使して、こんなぶ厚いグングニル雑誌を作って
藤原基央
出典:ROCK‘IN ON JAPAN 2000.06
もしかしたら今の若い子は自分で調べろよ、って思うかもしれないですが、グングニルを作曲していた2000年のインターネット普及率はわずか30%程で当時は家にパソコンがある家庭は珍しい時代でした。
モバイラーって単語はもはや死語ですね(笑)外でパソコンを使う人のことを言います。ちなみに2018年のポンツカでも藤原さんのお母さんが早い時期からパソコンを使っていたお話をしていました。
北欧神話を元に歌詞を書くも断念
藤原さんはお母さんが作ってくれた「グングニル雑誌」を読み、グングニルとは北欧神話に出てくるオーディンが持ってる槍だと知りました。
そこで北欧神話を元に歌詞を書こうとしますが、内容があまりにも荒れていてストーリーの最後には世界が破滅して終わるという残酷な終わりだったため、前向きな歌詞を書きたかった藤原さんは北欧神話を元にするのをやめてしまいました。
せっかくお母さんが作ってくれた「グングニル雑誌」は残念ながらネタとして使われずお蔵入りとなってしまいました。
余談ですが『ユグドラシル』の歌詞カードおよびDVDのメニュー画面に出てくる少年はオーディンであると思われます。
こちらの記事で少し紹介しております。
⇒【図解】BUMP「ユグドラシル」DVDの隠しトラックの出し方、見方
ライブで約10年ぶりに披露
『グングニル』はTOUR PATHFINDER 2017-2018で披露され新木場スタジオコーストのライブ映像にも収録されていますが、それ以前に最後に披露されたのは2008年1月25日ホームシック衛星の福井公演「響のホール」以来で約10年ぶりのことでした。
PATHFINDERでの久しぶりの演奏に対し「ずっと出したいと思っていた音で鳴らすことができた」とコメントしております。
昔は演奏技術や経験なども足りなかったので頭で思い描く音を鳴らすことができなかったのかもしれません。バンプの歴史を感じますね。
BUMP OF CHICKEN「グングニル」の歌詞解釈と意味
藤原さんはグングニルを「船出の唄」であり「タイマン勝負をしかける唄」と話しております。
私はこの曲は人間の社会的な心理を表していると感じました。
周りと違うことをすればその人はバカにされ笑われ罵られる、いつの時代もこういうことってあると思います。
藤原さんが好きなエヴァンゲリオンは今でこそ市民権を得ていますが、放送されていた当時はエヴァを見てる人はオタクと言われ、さらにアニメに出てくる女の子が好きだったらいわゆるキモオタというレッテルを貼られ周りからは冷ややかな目で見られていました。
綾波レイ 画像:YouTube
なので綾波レイが大好きな藤くんは社会的に見ればキモオタだったわけですが、でもそう呼ぶ人はアンチくらいで、実際に藤くんをキモオタと思ってる人は少ないはずです。
なぜなら藤くんはBUMP OF CHICKENというバンドが成功して市民権を得ているからであって、もし普通の一般人だとしたらキモオタと呼ばれていたかもしれません。
エヴァンゲリオン=オタク、と思われなくなった理由は多くの人がエヴァを見るようになり、作品のメッセージ性や哲学的な内容が評価され市民権を得たからだと思います。
要はみんなが認めていれば、大丈夫というわけです。人間の社会的心理は怖いですねー。
まさに『グングニル』に出てくる人達も同じ心理ですね。周りと違うことをする異端児がいたからみんなで罵っていたわけです。最終的にはみんな応援していますが、主人公の熱い思いにみんなが心打たれて市民権を得たからですね。
ステージに立つ覚悟
藤原さんは当時ライブのMCでお客さんにむかい
「期待背負わせやがって」
と発言したことに対し、ファンの方が
「あのMCはお客さんに対して失礼です」
と答えた人がいました。
藤原さんはその言葉に対して、言いたいことをいうこと、等身大の自分を見せることがとても覚悟がいることだということを理解していないことにとても腹を立てていました。
“どれだけの決意で立ってんのか分かってんのかと。どれだけの思いを、どれだけのつらさをそうやって蹂躙してんのかお前分かってんのかと”
藤原基央
出典:ROCK‘IN ON JAPAN 2000.06
今の藤原さんからは想像できないコメントですが、当時はたしかに荒れた罵声が多かったのは事実です。
しかし後にその当時のふるまいは“強がり”であり、そうでもしないとステージに立てない小心者だったと話しています。
⇒BUMP OF CHICKEN荒れていて尖っていた若かりし頃のエピソード
つまりライブでの尖ったコメントを言い放つのに、とてつもない勇気を出していたのです。それをファンから「失礼です」と簡単に蹂躙されてしまったわけですから、怒って当然?です。
『グングニル』では主人公が宝を探しに旅に出る話ですが、自分を突き動かす熱い心と覚悟は誰にも奪えない、本当に戦っていた相手は社会だったのかもしれません。《どこまでも胡散臭い宝の地図》と言ってるように主人公も地図が胡散臭いことはわかっていたのです。
主人公の本当の目的は自分を周囲の人に認めさせることだったのかもしれません。最終的には周囲の人達は主人公に夢を叶えてほしいと思わせるほどになっています。
この物語は当時の藤原基央を想いを主人公に重ねていたのかもしれませんね。
《世界の神ですら 君を笑おうとも 俺は決して笑わない》
この歌詞に藤原さんの想いが表れていますね。夢に向かって進むことの社会的評価が厳しいことも、その覚悟の重さも十分身をもって知っているからこそ、言えたセリフだと思います。
“自分だけこういうとこで熱くなっておかしいんじゃねえかって思ってる人もいるかもしんないし、人によっちゃあそれはほんとに素晴らしいことでっていう”
藤原基央
出典:ROCK‘IN ON JAPAN 2000.06