アルバム「orbital period」の楽曲情報と制作背景‐28年周期を意味するタイトルに込めた思い‐

BUMP OF CHICKEN(バンプオブチキン)のアルバム『orbital period』(オービタルピリオド)を公式情報やインタビューを元に解説していきます。この記事ではアルバムの解説や収録曲、タイトルの意味の考察、制作背景などについてご紹介します。『orbital period』の楽曲を聴く際に参考にして下さい。

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BUMP OF CHICKENのアルバム『orbital period』情報

orbital periodの基本情報

タイトルorbital period(5th Album)
発売日2007年12月19日
制作期間2005年~2007年秋頃
収録曲集28曲(シークレット含む)
アルバムツアーホームシック衛星 2008年1月10日-2008年2月13日
ホームシップ衛星 2008年2月23日-2008年7月5日

BUMP OF CHICKENのアルバム「orbital period」(オービタルピリオド)はバンプ通算5枚目のアルバムで2007年12月19日に発売されました。

前のアルバム現在次のアルバム
バンプオブチキンのアルバムユグドラシルのジャケット
ユグドラシル(4th Album)
バンプオブチキンのアルバムオービタルピリオドのジャケット
orbital period(5th Album)

COSMONAUT(6th Album)

orbital periodの収録曲

トラックタイトル概要
1
voyager
アルバムのオープニング為に作られた曲でトラック17の「flyby」と1対になっている。

タイトルは宇宙探査機「ボイジャー1号」を意味する。

2
星の鳥
インストゥルメンタル楽曲。ディレクターのアイデアで「メーデー」の前奏を長くしたもの。

「メーデー」で使われているアルペジオが使われている。

3バンプオブチキンのメーデーのジャケット
メーデー
【14th Single】

コミュニケーションをテーマにした曲。フェスを間近に控えた藤原が「人と本当に繋がること」について考えて制作された。

公式ラブソングのひとつ。

4バンプオブチキンの才悩人応援歌の画像
才悩人応援歌
「才能」ではなく「才悩」と書く。この曲は「頑張れ」という言葉に取って代わる応援歌であると藤原は話している。
5バンプオブチキンのプラネタリウムのジャケット
プラネタリウム
【10th Single】

藤原が子供の頃に工作で、手作りのプラネタリウムを作った経験を元に書かれた曲。「憧れていたものに触れてしまった絶望感」を表現した内容になっている。

6バンプオブチキンのsupernova
supernova
【11th Single】

地球上で見えている星は過去の光で、今はもう存在しないかもしれないということから、「失ってから気付く大切さ」をテーマにした曲。

7バンプオブチキンのハンマーソングと痛みの塔の画像
ハンマーソングと痛みの塔
「大きな声で歌わないと書けない曲だった」と話し、完成後に藤原の自宅マンションにメンバーを集め、弾き語りで大声で披露した。翌日マンションの住人から苦情がきた。
8バンプオブチキンの時空かくれんぼの画像
時空かくれんぼ
「8分の6拍子をやってみたい」と思ったことがきっかけで作られた曲。

難解な歌詞で藤原は「時空かくれんぼという行為について歌ってるとしか言いようがない」とコメントしている

9バンプオブチキンのかさぶたぶたぶの画像
かさぶたぶたぶ
もともと隠しトラック用に書いた曲だったが、「いい曲としてやりたい」と周囲の意見があり、アルバムに収録されることになった。
10バンプオブチキンの花の名のジャケット
花の名
【13th Single】

映画『ALWAYS 続・三丁目の夕日』の主題歌。

藤原がケータイにメモしていた言葉を組み合わせて作詞された。

公式ラブソングのひとつ。

11バンプオブチキンのひとりごとの画像
ひとりごと
藤原が考える「優しさ」について書かれた曲。優しさについてはこういう方法論でしか決着がつけられなかったと話している。
12バンプオブチキンの飴玉の唄の画像
飴玉の唄
「信じることの究極系」について書かれた曲。
13
星の鳥-reprise-
トラック2の「星の鳥」と同じく、「メーデー」のアルペジオを使ったインストゥルメンタル楽曲で。
14バンプオブチキンのアルバムユグドラシルのジャケット
カルマ
【11th Single】

ゲームソフト「テイルズオブジアビス」の主題歌に書き下ろされた楽曲。「カルマ」という題材はずっと藤原が書きたかったテーマで、タイアップをきっかけに書き上げることができた。

15バンプオブチキンのアローズ
arrows
涙が生まれるまでの経緯を、2人の迷子の物語を通して表現した曲。

藤原は曲順が「涙のふるさと」の前か後になると思っていた。

16バンプオブチキンの涙のふるさとのジャケット
涙のふるさと
ロッテ「エアーズ」CM曲。

涙が生まれた理由を知る為の物語で、トラック15の「arrows」と対になるテーマである。

17
flyby
「通過接近」という意味で、アルバムのエンディング用に書かれ、「voyager」と1対になるように作られた。

ギターにはディストーションがかかっており、強い口調で歌っているが、これはタイトルの“接近している”ということを伝える作業であると思われる。

18~27無音
28BELIEVE隠しトラック

Apple Music

BUMP OF CHICKENの「orbital period」の意味

28年周期とは?

最初に考えていたタイトルは「公転周期」でした。しかし英語にしたらどうなるのか気になった藤原さんはケータイの辞書で意味を調べると「orbital period」と出てきました。

藤原さんは初めに出てきた「orbital period」という単語がかっこいいと思ってしまい、そのままタイトルになりました。

そもそも、公転周期というタイトルにしたかった理由は「6年→5年→6年→11年」の周期によって同じ曜日で誕生日を迎え、トータル28年で一つの周期を終え、再び「6年→5年→6年→11年」の周期が始まることに藤原さんが気づいたからです。つまり上の図のように28年で1周するというのが「orbital period」公転周期なのです。

メンバーとの28年の絆

この28年周期のことを「太陽章」といいますが、藤原さんはそれを自力で発見し、自分の誕生日にメンバーにこのことを伝えると4人で感動を共有し合いました。

おそらく普通の人が28年周期の話を聞いても「だからなに?」って感じになると思います。しかし藤原さんにとってはとても大きなことで、メンバーもそれに藤原さん以上に感動していました。

(メンバーが)感動してるのが、嫌ぁなくらい伝わってきて(笑)。「だからバンプオブチキンやってんだろうなあ」と思ったんすけど

藤原基央
出典:MUSICA 2008.1

この4人には余計な言葉は不要みたいですね、仲良しというだけでなく言葉を超えた絆があるようです。

そしてこの28年周期を象徴する楽曲が、アルバムのオープニングとエンディングを担っている「voyager」と「flyby」です。この2曲は唯一「orbital period」というアルバムの為に作られた作品です。



BUMP OF CHICKEN「orbital period」アルバムの特徴

テーマの変遷

前作のアルバム「ユグドラシル」は非常に内省的でひと言でいえば“孤独を歌ったもの”でした。孤独とはいっても別に仲間外れとか、寂しいとかそういう意味ではなく、「私とあなたは別な生き物である」といった、自分という生き物は一人しかいないという意味の孤独です。

寂しいっていう意味の「孤独」ではなく、単独の生き物であるっていう— 人間、同じ人はふたりはいないじゃないですか、そういう意味の孤独ですから

藤原基央
出典:MUSICA 2008.01

そういう意味での孤独を抱える恐怖とそれに打ち勝つ勇気が「ユグドラシル」に見られるテーマでしたが、「orbital period」は明らかに外に向かっている作品です

変わらず自分のことを歌っているが、今までよりも圧倒的に「僕からあなたへ」という構想が強くなっています。アルバム中で一番古い「プラネタリウム」もやはり外に向かっている曲だし、最後にできた「voyager」「flyby」も「僕からあなたへ」という構想が色濃く出ているのがわかります。

今までよりも圧倒的に「僕からあなたへ」ということをミュージシャンとして確実に意識しているものになってるんじゃないかなと思うんです

藤原基央
出典:MUSICA 2008.01

わかりやすく言えば、今まで自分の内側で完結してものが、今作では明らかに他者を意識しているということです。次作「COSMONAUT」では「宇宙飛行士への手紙」や「透明飛行船」をはじめ多くの楽曲に藤原の実体験や実在の場所が歌詞に登場するようになり、さらに現実味のある他者を意識した作品になっています。

そう考えると「ユグドラシル」→「orbital period」→「COSMONAUT」と徐々に心が内側から外側にシフトしていて「orbital period」はその過渡期といえるかもしれませんね。

正しい曲順とディレクターへの信頼

「voyager」「flyby」はオープニングとエンディングなので曲の位置が最初と最後になることは決まっていました。「星の鳥」はディレクター(プロデューサー?)からのアイデアで「メーデー」の前奏を長くしたいという意見を取り入れたものでした。そして13曲目に「星の鳥 reprise」入れたのもディレクターのアイデアでした。

(星の鳥のアイデアが)正しいと思います。そんとき僕が作ってたブックレットをすっごい見てくれてて。その物語の流れに沿ってもらえたというか・・・うん。すごいなと思いました

藤原基央
出典:bridge 2008 WINTER

藤原さんは信頼するディレクター、スタッフが自分たちの作品を1歩2歩引いた場所から客観的に見てくれてると思い、曲順などは全て任せてあったそうです。

そんな中でも「涙のふるさと」は一番最後、「arrows」はその前になると自分でも思っていたらしくディレクターの決めた曲順は藤原さんにとってかなり納得いくものになったようです。

やっぱり、曲順はこれしかないなって、自分らでも思ってたんですよね。ディレクター、きっと喜んでます。しかもそれが絶対正しいから、僕らは彼とやってるんだと思うんです

藤原基央
出典:bridge 2008 WINTER

藤原さんをはじめメンバーからも厚い信頼を寄せるディレクターはBUMP OF CHICKENの楽曲のもつ役割、藤原さんが曲に込めた想いなど十分に理解してるからこそ曲が一番役割を全うできる曲順にすることができたのだと思います。



隠しトラック「BELIEVE」の役割

オープニングとエンディングの役割を担った「voyagert」と「flyby」ですが、トラック1で打ち上げられた探査機がトラック17にて1周廻って戻ってくる様子が描かれています。アルバムの物語はここで公転周期を終え幕を閉じるわけですが、その後に無音のトラックが10個入っており、28曲目に隠しトラック「BELIEVE」が収録されています。

トラック数を28個にしたのはもちろん「28年周期」を表しているからです。

実はそれだけじゃないんです。28年周期を思い出して見て下さい。

「6年→5年⇒6年→11年」の計28年で一つの周期を作っていると最初に説明しました。これをアルバムの曲順に当てはめてみて下さい。

1曲目で「voyager」が打ち上げられ「6+5+6=17」17曲目(17年目)でエンディングの「flyby」でボイジャーが惑星に通過接近します。そしてまた宇宙空間を旅することになるのですが、トラック18以降の無音は宇宙空間を表しているようにも感じます。

それだけでなく「flyby」後の11トラック分が最後の11年を表していて、28年目ともいえる28曲目に「BELIEVE」が収録されている。つまりボイジャーはどれだけ離れても“あなたを信じている”という意味を込めた仕掛けではないだろうか。

BUMP OF CHICKENという観点から見ると「オレお前ビリーブ、それってトゥルース」これは単なるおふざけでなく28年というひとつの大きな周期を一緒に生きてこれたという再確認ではないだろうか?

「orbital period」DVDより

28年という歳月をいっしょに過ごすには信頼が不可欠です。隠しトラックはいつもはおふざけで制作してますが、「BELIEVE」に関してはアルバム以降もたびたび使われていますし、ほかのシークレット作品とは違った扱いを受けています。

私の友人は「orbital period」は1曲1曲のクオリティ、曲順、シークレットの「BELIEVE」も含め、バンプ史上最も完璧なアルバムと評していました。逆に完璧すぎてあまり好きじゃない作品とも話していて、そのバランスが取れたのが「COSMONAUT」だと話していましたが、私にも今になってその意味がわかったような気がします。

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