完成時期 | 1999年秋‐2000年春 |
収録アルバム | THE LIVING DEAD |
発売日 | 2000年3月25日 |
作詞作曲 | 藤原基央 |
BUMP OF CHICKENの『Ever lasting lie』(エバーラスティングライ)はバンプのアルバム『THE LIVING DEAD』に収録されている楽曲です。
演奏時間が8:37とバンプの中で一番長い曲となっており、それに見合うだけの名曲です。私はこの曲の歌詞に耳を傾けて聴いた時ふいに涙が零れてしまいました。
個人的に間奏のギターが90年代の洋ロックぽくて好きです。
それでは楽曲解説と歌詞の意味を解釈していきます。
BUMP OF CHICKEN「Everlasting lie」公式情報
『Everlasting lie』とは【永遠に続く嘘】という意味で、歌詞の中にある「二人は大丈夫」という信じられる根拠のない嘘(約束)から取ったタイトルです。
藤原基央なりのゴスペルを表現した曲
この曲は藤原さんがゴスペルを書きたかったという思いで書き上げ、歌詞は後から付けられました。
その当時、藤原さんはファンだと公言するサイモン・アンド・ガーファンクルの『明日に架ける橋』やローリングストーンズの『セイント・オブ・ミー』などのゴスペルを聴いていて、自分なりの解釈のゴスペルをやってみたかったそうです。
“僕なりの解釈のゴスペルをやってみたいなあと思ってて。で、和音の美しさってのが僕はいつも心打たれるんですよ”
藤原基央
出典:ROCK‘IN ON JAPAN 2000.06
【ゴスペルをテーマにした曲】
・Ever lasting lie(2000年)
・supernova(2005年)
・angel fall(2010年)
・Spica(2018年)
こうしてみるといろんな時代にゴスペルをテーマにした曲を書いていますね。やはり好きなアーティストの影響を受けているんだと思います。
ちなみにこの曲は「ピアノでやってみたい」とも話しており、後に制作されるアコースティックバージョンといい、いろんなアレンジを考えていたことがわかります。というのもTHE LIVING DEADの収録曲は約一週間という短い期間でレコーディングしなければならない過酷な状況だったため、アレンジについて追求している暇がなかったからだと思います。
“「THE LIVING DEAD」の頃の“Ever lasting lie”は、今(2008年)聴けば全員が全員欲求不満ですから。もっとこうしたいっていうのがいっぱいあるから”
藤原基央
出典:MUSICA 2008.07
アコースティックヴァージョンを制作した理由
「Ever lasting lie(Acoustic Version)」は『アルエ』のシングルのカップリング曲として収録されています。
そもそもアルエがアルバムからシングルカットされた理由はハイラインレコーズからトイズファクトリーに移った時にトイズでリマスタリングしたという名刺代わりの意味を込めて制作されました。
そしてそのカップリングには『Ever lasting lie』が良いとスタッフから指定され「あの曲のアコースティックヴァージョン聴いてみたいなあ」と言われたことが藤原さんはとても嬉しかったそうです。
ちなみにバンプのトイズファクトリーとの出会いはライブの楽屋でのことでした。
「THE LIVING DEAD」をレコーディングしていた当時、ライブも並行して行っていて、その時メジャーのレコード会社の人も毎回観に来てくれていました。バンプはあまりにも過密スケジュールだった為に事務所がレコード会社との接触を拒み守ろうとしていました。
しかし・・・バンッ!(ドアを開ける音)
「大ファンです!」
トイズファクトリーの人がバンプの楽屋に押しかけてきました(笑)
こうしてトイズからの熱い想いを受け取ったバンプは一瞬で「トイズとやりたい!」と思うようになりました。
そして藤原さんは自分たちの音楽を理解してくれてるトイズと音楽を作ったらどれだえすごいものができるだろうと思ったそうです。その想いを最初に形にできたのが「Ever lasting lie(Acoustic Version)」だったのです。
BUMP OF CHICKEN「Everlasting lie」の歌詞解釈と意味
「Everlasting lie」は悲しい曲ではない
この曲の物語は悲しい歌だと思う人が多いようですが、藤原基央は「THE LIVING DEADで悲しい歌は歌っていない」と語り、今までも悲しい歌を一度も歌ったことがないとも言っています。
“作曲家・藤原基央が誕生した時から、僕は悲しい歌を一度も歌ったことがないんです。全てハッピーエンドにしてます”
藤原基央
出典:ROCK‘IN ON JAPAN 2000.06
『Ever lasting lie』の物語を簡単にまとめてみます。
とても仲の良い若い男女がいました。二人は愛し合っていましたがとても貧しい暮らしを続けていて次第にお金を払えなくなってしまいます。そして女性はとうとう※身売りされることになり、夜のお店で働くことになってしまいます。
そして男性は別れ際に放った「二人は大丈夫、明日を信じて待っていてくれ」という嘘を信じて女性はずっとその言葉を歳を取っても忘れずに毎朝呟いていました。男性はずっと砂漠で石油を掘り当てようとしましたが、女性が亡くなるまで叶うことはありませんでした。
※身売りとは昔はどこの国でも当たり前にある話でした。日本で有名なのは江戸時代の吉原ですね。そこで働く遊女のほとんどは借金が返せなくなり売られた人だと言われています。
途中の長い間奏は時間の経過を表現していると思います。とまあこんな感じで結末だけ見れば悲しくむなしいお話なんですが、私もこの曲は悲しい物語だとは思いません。その理由をこれから説明していきますね。
「Everlasting lie」がハッピーエンドの理由
まずハッピーエンドである一つ目の理由は、おばあさんが死ぬまで希望を感じていたからです。
“とある街の小さな教会で 優しい長生きのばあさんが 眠りについた
ろくに動けなくなってからも 毎朝 何かを呟いて微笑んだ”
「Ever lasting lie」/BUMP OF CHICKEN
冒頭でこの曲を聴いて泣いたと話しましたが、それはおばあさんが亡くなるまでずっと《毎朝 何かを呟いて 微笑んだ》というフレーズで一気に涙腺が崩壊してしましました。
これを書いてる今も泣きそうですが、私はおばあさんが「微笑んでいた」ことに希望を感じました。これ以上言葉にすると安っぽいことしか言えなそうなのでこれ以上は書きませんが・・・きっとおばあさんは毎日、「明日愛する人が迎えに来てくれる」という希望を夢に最期まで生きていたのでしょう。
つまりおばあさんはずっと希望を感じていたのです。
そして二つ目の理由は、嘘を最期まで信じ抜くことができたからです。
この曲のタイトルは【永遠に続く嘘】です。ということは男性も最期まで石油を掘り当てることができなかったことがわかります。「二人は大丈夫」という根拠のない嘘を本当に変えることができなかったのです。
これだけだとバッドエンドですが、重要なのは「信じること」です。
この物語は運命によって引き裂かれた二人を描いていますが、《Sir Destiny アナタでもこの気持ちは動かせないでしょう?》ここからわかるように、どれだけ運命が二人を引き裂こうと心は惹かれあっていたのです。つまり運命が二人を引き裂いたけど、二人は死ぬまでお互いを信じ抜くことができたのです。
このことから何か思い出しませんか?
“勝てない神様 負けない 祈らない
限りある君の その最期に触れて 全てに勝つよ”
「飴玉の唄」/BUMP OF CHICKEN
「飴玉の唄」の最後のフレーズですが、信じることについて歌ったこの曲は、このフレーズがなければ信じたことについて歌い切ったことにはならないと藤原さんは話しています。
Ever lasting lieのSir Destinyである運命様を神様と言い換えても意味は通じると思います。
離れ離れになった二人は正直なところ、別の恋人を作っていてもお互い知る由はありません。それでも二人は別々の場所にいながらも互いを信じて、死ぬその時まで疑うことはありませんでした。
おそらく、裏切られてもそれがわからないくらい信じていたと思います。男性も最後は自分の夢がわからなくなっているくらいなので、愛する人を助ける=石油を掘ることになっていて本質を忘れてしまうくらい必死だったんですね。
つまり、運命が二人を引き裂こうとしたのに、二人は物理的には離れていても心は死ぬまで離れることはなかった。これって運命に勝った、全てに勝ったということにならないでしょうか?
よくある話なら、最後に石油を掘り当てて嘘を本当に変えることができた、みたいな話になると思うんですが、藤原さんは嘘を信じ抜くことができた話を描いたわけですね。
運命 VS 二人 の戦いに見事勝利したのです。なのでハッピーエンドというわけです。死ぬことがバッドエンドである理由にはなりません。藤原さんは生きることも死ぬことも価値があると考えています。
なぜ嘘をテーマにしたのか?
“Ever lasting lieって歌で“嘘”というのを“約束”に近いものにしたし、“嘘”を“生きる力”にすることができたし”
言葉そのものがネガティブなパワーを持っているんじゃなくて、言葉に対して僕らがネガティブなイメージを付けたりするわけですよ
藤原基央
出典:MUSICA 2008.01
死ななければ、二人は互いを信じる必要なんてなかったし、身売りされることも必死に石油を掘り当てることもなかったし、そもそも死なない人生なんてドラマがないですからね。
そして嘘は藤原さんが言ったようにこの物語において生きる力になっています。このことから嘘自体が悪いことではないことがわかります。
普段の生活で私たちはあたりまえに嘘をついています。意図してついた嘘もありますが、なかには気付かないうちに嘘をついてることもあります。夢を叶えようとすることだって夢を叶えられるまでは嘘ってことになりますよね。
一般的にはネガティブと言われてる嘘をテーマにすることで、言葉の良い悪いは自分たちがそう決めつけているだけだということを伝えようとしている気がします。当時藤原さんは二十歳ですが、その若さでその事実に気付き、見事に詞を書き上げてるという天才性に驚愕です。
生きてることの奇跡
藤原さんがこの曲で伝えたいことは嘘のほかに、人は本人が気づいていなくてもそれぞれ感動的な生き方をしているということです。
“人間が生まれてから死にゆくまで、そん中での辿ってきた道の、三者三様、十人十色、千差万別があって。でもどの人をとってもめちゃくちゃ泣けるんだとか、めちゃくちゃ感動的な生き方を誰だってしてるんだと。そういう曲かな”
藤原基央
出典:ROCK‘IN ON JAPAN 2000.06
「Ever lasting lie」の男性だって、本人からすれば運命に弄ばれ、ただ砂を掘ってるだけの人生なんてたまったものじゃないですよね。
でも周りから見れば、愛する女性の為に生涯、砂を掘り続けた男がいた。こんな風に見えていたかもしれません。
あまりにも健気で一途で勇敢で・・・彼の生き様はいろんな人に勇気と感動を与えたに違いありません。
私も今までがんばって生きてる人の姿に勇気をもらってきました。たとえがんばってない人だって、その心の葛藤を知れば誰もが感動すると思います。むしろ生きてる人で必死じゃない人なんていないじゃないかと思っています。